人体の内外の多くの管や空洞は、「粘膜」と呼ばれるバリアで覆われています。それは鎧や兜のように作用し、外部の病原体やウイルスの脅威から身体を効果的に守ることができます。さらに、粘膜には分泌、吸収、感知などの複数の機能があり、体を全面的に保護することができます。
粘膜器官は一般に、口腔粘膜、まぶたの粘膜、鼻粘膜、胃、消化管、直腸、食道粘膜、外陰粘膜などの口がある部分を指します。
皮膚と粘膜は人体を保護し、外界に対して密閉したシステムを形成します。有害物質が口腔粘膜に侵入しようとすると、まず皮膚や粘膜が体外の病気因子を体外にシャットアウトします。成人の全身の粘膜面積は約400平方メートルで、皮膚の2平方メートルよりもはるかに大きくなっています。この大きな違いは、外来病原体が人体に侵入しやすいことを意味しており、このため粘膜は自身の防御メカニズムを持っているのです。
粘膜の損傷に関係する疾病の範囲は広く、実際、口腔科、皮膚科、耳鼻咽喉科、内科などの各分野において粘膜の完全性が非常に重要とされています。
口腔粘膜がダメージをうけると、口から病気が入り、炎症を引き起こし、さらには免疫の失調をきたす
呼吸器粘膜がダメージを受けると、感染のリスクが大幅に高まる
- 最前線のバリアが破壊されると、細菌やウイルスが直接入り込んで病気を引き起こします
- 口腔内微生物のバランスが崩れて、歯周病菌が悪さをすると、歯周病、歯肉萎縮、口臭、粘膜下の神経損傷を引き起こし、ひどい時には全身の免疫失調を引き起こします。
- 加齢や化学療法、自己免疫疾患といった病的あるいは物理的な唾液の減少も、摩擦の増加による口腔粘膜の損傷を引き起こします。
- 免疫力が低下すると、粘膜内の免疫細胞の数が減少し、粘膜上皮細胞の完全性が低下することで、外来病原体を防ぐことができなくなります。
胃粘膜がダメージを受けると、生活と食事の質が低下する
- 胃内側の表面は全体が、粘液を分泌する粘膜組織の層で覆われており、粘液と粘膜のバリアを形成して胃の組織を胃酸から保護します。胃粘膜の損傷は胃炎、胃潰瘍に多く見られます。
- これまで、胃粘膜の損傷は、喫煙、飲酒、濃いお茶、コーヒー、アスピリンや抗炎症薬など胃粘膜を刺激する薬物など、生活習慣や食生活の悪さによって引き起こされると考えられてきました。しかし、社会の生活のリズムが速くなるにつれて、過度のストレスによるアドレナリンの過剰分泌や腸内細菌の不均衡が生じ、ストレス潰瘍を引き起こす傾向も明らかに強まっています。
- 胃の炎症が長引くと、粘膜がダメージを受けて萎縮し始め、萎縮性胃炎を引き起こし、さらには胃粘膜の腸上皮化生が発生します。腸上皮化生(Intestinal Metaplasia)は胃がんに変わる可能性があります。
- 胃粘膜が損傷すると、胃酸が胃壁に直接作用して潰瘍になります。
腸粘膜がダメージを受けると、慢性炎症、腸内細菌群の変化、リーキーガット症候群のリスクが
- 腸内細菌群の安定は、腸壁の完全性を維持し、リーキーガット症候群の発生を防ぐのに役立ちます。腸内細菌のバランスが崩れると、腸内細菌群の多様性が低下し、善玉菌群の減少と悪玉菌群の増加が起こり、腸膜の損傷と炎症を引き起こします。そして、最終的にはリーキーガット症候群が発生し、さらには全身の免疫バランス失調が起こります。
- 腸管の粘膜細胞がダメージを受けるとリーキーガット症候群を引き起こします。そして、IBD(炎症性腸疾患)が発生するだけでなく、毒素、アレルゲン、病原体などが直接粘膜固有層に入り込み、免疫のバランス失調と撹乱も引き起こします。